脂質異常症

悪玉(LDL)コレステロールとは

脂質異常症とは、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールや、血液中の中性脂肪(トリグリセライド)が正常値以上に増加するか、または善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールが正常値以下に低下した状態を指します。
以前は、悪玉と善玉を区別せずにひとまとまりの総コレステロール値として測定し、これが基準値を超えると高脂血症と診断され、治療が必要とされてきました。しかし、その後の研究で、心筋梗塞や脳卒中など重篤な疾患を引き起こす危険性が高いものは、悪玉コレステロールであるLDLコレステロール値の方であることがわかったため、現在ではLDLコレステロールを管理することが重要とされています。


脳梗塞や心筋梗塞を
誘発する脂質異常症

血液中の脂質量が長期間過剰になると、余分な脂質が血管の壁に蓄積していき、血流が妨げられていきます。これが一般的に動脈硬化と言われる状態です。
動脈硬化は、初期段階では自覚症状がほとんど現れない特徴があります。しかし、この状態が続くと、心臓や脳へ正常に血液を送り届けることができなくなり、心筋梗塞や脳梗塞など重篤な疾患が引き起こされる恐れがあります。これらは自覚症状がほとんどなく進行するため、脳卒中が発生して初めて脂質異常症の危険性に気づく人も多いです。この段階になると、命の危険が伴うことも多く、治療しても身体に後遺症が残る可能性もあります。
日本人の死因の第2位と第3位は、心臓病と脳卒中です。これらは動脈硬化が根本的な原因となって起こる血管の疾患になります。
したがって、動脈硬化を未然に防ぐことはとても重要になります。

心筋梗塞


脂質異常症の
検査と早期発見

脂質異常症は他の生活習慣病と同様に自覚症状があまりないため、気づかないうちに進行していることが多く、定期検診等で脂質値の異常を指摘されて初めて気づくことが多い疾患です。
診断は、食事後12時間以上経過した状態で血液を採取し、血液中の脂質の量を測定します。定期検診の血液検査では、一度に様々な血液中の数値を測定しますので、通常脂質異常症だけを目的とした検査は行いません。
自覚症状がないのは、病気が初期段階であるため、ひとたび重篤な病気が発症してしまうと、対応が間に合わなくなる可能性があります。そのため、できるだけ早期に症状を発見し、対策することが重要になります。
気になる症状がある方は、ぜひお気軽に当院までご相談ください。


脂質異常症の原因

脂質異常症の主な原因は食事習慣と生活習慣の乱れになります。脂質の多い食事や間食、野菜不足、運動不足など生活習慣が乱れると、メタボリックシンドロームを引き起こします。
それ以外にも様々な原因がありますので、主なものを以下にご紹介します。

仕事や家庭でのストレス

ストレスを蓄積すると、体内の交感神経が刺激を受け、血管を収縮させて血圧が上昇します。また、体内で様々な物質が多く作られることで、コレステロール濃度や血糖値も上昇します。
それ以外でも、ストレスの多い生活を送っていると、食生活が乱れたり飲酒が増えたりと、生活習慣にも悪影響が及ぶようになります。これらも中性脂肪やコレステロールを増やしてしまう原因となります。
ストレスの対処法は難しいですが、できるだけ上手にストレスと向き付き合っていける方法を見つけていくことが大切です。

タバコ・喫煙習慣

タバコに含まれるニコチンは交感神経を刺激させ、血圧や心拍数を上昇させるなど、心臓に負担をかける原因となります。その他にも、喫煙には以下のような問題を引き起こす可能性があります。これらはいずれも動脈硬化を促進する原因となりますので、注意が必要です。

  • 中性脂肪の元となる血液中の遊離脂肪酸が増加する
  • 血液中のコレステロールが酸化し、粥状動脈硬化が進行する
  • 善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低下する

現在は禁煙も治療が可能となっています。ぜひ1日も早く禁煙を開始し、健康な状態を取り戻しましょう。


脂質異常症の治療

脂質異常症の基本的な治療法は、食事療法と運動療法になります。これらを実践しても数値が改善されない場合には、必要に応じて薬を用いた治療を行います。現在は、脂質異常症に対して有効な薬もあります。また、心疾患や家族性高コレステロール血症の方など、特に合併症の発症リスクが高い疾患をお持ちの場合には、2~4週間に1回の注射による治療法もございます。
脂質異常症の治療の目標は、中性脂肪・LDLコレステロール・HDLコレステロールの数値を正常値まで改善させ、その後も適正な数値の範囲を維持して動脈硬化を進行させないことです。健康診断で中性脂肪やコレステロール値の異常を指摘された方は、早期に受診し治療を開始することが大切となります。


脂質異常症とヨーグルト

脂質異常症の患者様は肉の脂身や乳製品の摂取は控えた方が良いと医師から言われることがありますが、食べ方や食べる量を工夫すれば決して食べてはいけないということではありません。
例として、乳製品であるヨーグルトの食べ方の注意点を以下でご説明します。

LDLコレステロール値が高い人

脂質異常症の患者様の中で、LDLコレステロール値が高い人はヨーグルトの食べ方に注意が必要です。LDLコレステロール値が最も向上する原因は、肉の脂身や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸の過剰摂取となります。
18歳以上において理想的な飽和脂肪酸の摂取量は、1日の総摂取エネルギー量の7%以下とされています。20歳以上の日本人が1日に摂取するエネルギー量の平均は約1900kcalですので、7%は約14.8gになります。
例えば、無糖のヨーグルト100gに含まれる飽和脂肪酸は1.83gになります。そのため、1日に1個程度でしたら、基準値を大きく超えることはありません。
ただし、肉類や牛乳を多く摂取した日はヨーグルトを控えるなど、他の食事とのバランスには注意を配る必要はあります。過剰摂取を控えれば、無脂肪ヨーグルトや低脂肪ヨーグルトはLDLコレステロール値が高い人にお勧めです。

HDLコレステロール値が低い人

HDLコレステロール値とヨーグルトの摂取に特に関連性はありませんが、トランス脂肪酸の摂取とは関連性が高く、これらを過剰摂取することで肥満や中性脂肪値が向上します。特に中性脂肪値が高くなるとHDLコレステロールは低下する傾向がありますので、注意が必要です。トランス脂肪酸とは、マーガリンやファットスプレッド、ショートニングなどに多く含まれる脂肪酸で、牛肉や乳製品にも微量に含まれます。

中性脂肪値が高い人

中性脂肪値が上がる要因として、糖質を多く含む菓子類や飲料など、糖分の過剰摂取が挙げられます。そのため、中性脂肪値が高い人は、加糖やドリンクタイプなど糖分を多く含むヨーグルトの摂取には注意が必要です。特にドリンクタイプのヨーグルトは、固形タイプより糖分を多く含むものが一般的で、また、1回に飲む量も多くなりがちになりますので、注意しましょう。
中性脂肪値が高い人には固形の無糖ヨーグルトがお勧めです。ドリンクタイプのヨーグルトを飲む際には糖分が少ない物を選んだり、間食でのみ飲むなど、摂取頻度を少なくすると良いでしょう。