高血圧

高血圧とは

血圧とは、血液が血管の壁に与える圧力のことを言います。私たちの血圧は、体を動かす、寒さを感じるなど些細なことで上昇しますが、こうした圧力上昇は一時的なものです。高血圧とは、安静状態であっても慢性的に血圧が正常値よりも高い状態のことを言います。
高血圧になると、血管に常に負担がかかるため、血管の内壁が損傷や硬化を起こして、動脈硬化を引き起こす恐れがあります。高血圧状態が続くと、心臓や脳にも重篤な症状を引き起こす可能性が高まりますので、血圧を気に留めるようにしましょう。


高血圧の注意が必要な人

以下の中で当てはまる項目が3つ以上ある方は、高血圧への注意が必要です。早めに医師に相談するようにしましょう。

  • 食事に野菜が少ない
  • 濃い味付けの食事を好む
  • 週に3回以上外食している
  • 飲酒習慣がある
  • 運動時間が1日平均30分未満である
  • 1日10本以上の喫煙習慣がある
  • 両親・兄弟姉妹の中に高血圧の人がいる
  • 慢性的に睡眠不足気味である
  • ストレスを蓄積しやすい

高血圧が招く病気

心不全、狭心症・心筋梗塞などの心疾患

心不全、心筋梗塞、狭心症などの心疾患高血圧状態が続くと血管が硬化を起こし、血液を全身に送るために更に強い力が求められ、心臓に大きな負担を与えます。その結果、心臓がこの負担に対応するために筋肉を強化し、心肥大という肥大化を起こします。心肥大を起こすと、心不全、狭心症、心筋梗塞、心室性不整脈など、様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。
心不全は、心臓が正常に血液を循環させられなく状態で、発症すると呼吸困難や浮腫などを発症し、生活に様々な支障をきたします。
また、心臓を支えるために血液を供給している冠動脈が狭まることで、狭心症を引き起こす可能性も高まります。狭心症を発症すると、呼吸困難や胸痛などの症状が現れます。さらに狭心症が進行して冠動脈が閉塞すると、心筋梗塞を起こす可能性があります。
これら症状は一般的に女性より男性の方に多い傾向があり、わずか10mmHg血圧が上昇することが狭心症や心筋梗塞の発症リスクを約15%増加させるという報告もあります。
したがって、高血圧にならぬよう、十分に生活習慣への注意が必要です。

脳梗塞、くも膜下出血など

高血圧状態が続くと、脳梗塞や脳出血、またはくも膜下出血といった脳卒中の発症率が高まります。脳卒中の大部分を占めているのは脳梗塞で、これは脳への血流の循環が遮断される状態です。
一方で、脳出血とは脳の血管が破裂し、血液が脳内に流出した状態を指します。また、くも膜下出血は、脳内の動脈瘤が破裂して血液が流れ出す状態を指します。脳出血やくも膜下出血は、発症すると命の危険が及ぶ疾患で、脳卒中によって入院治療を行なった患者様の30日後の平均的な死亡率は約15%という報告があります。一命を取り留めたとしても、運動能力や言語能力などに重大な障害が残ることが多く、回復のために長期間リハビリテーションが必要となることが多いです。
したがって、血圧をしっかりと管理し、高血圧を予防することが重要です。

慢性腎臓病

腎臓は体内の血液をろ過して尿を生成する器官で、高血圧になると、この腎臓への負担も増加し、腎機能障害や腎不全を引き起こす可能性が高まります。
高血圧状態が続くと、腎臓内で毛細血管が集中している糸球体という部分が損傷を受け、尿にタンパク質が混入する蛋白尿を発症したり、体外へ排出する塩分や老廃物を適切にろ過できなくなる恐れがあります。また、高血圧によって腎臓の問題が生じると、さらに高血圧を進行させてしまい、病状が悪循環に陥ることもあります。
慢性腎臓病がさらに進行すると自身で血液をろ過できなくなるため、人工透析が必要となり、生活に大きな支障をきたすようになります。
また、腎臓病が慢性化すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高め、命の危険を伴う状態になる可能性も高まります。
腎臓機能が低下している時の初期症状として、むくみや疲労感などがあります。これら症状が現れた際には、早期に医療機関を受診するようにしましょう。


高血圧の治療

高血圧の主な予防法や治療法としては、肥満の解消、禁煙・節酒、軽い有酸素運動の習慣化に加え、塩分の低い食生活への改善などが挙げられます。これら健康な生活習慣は、継続することが何より重要ですので、無理のない範囲からスタートし、ストレスなく継続することを心がけましょう。
生活習慣の改善のみでは充分に効果が得られない場合には、薬物療法を検討します。ただし、薬物療法を導入したとしても、生活習慣を改善する努力を継続することが大切です。生活習慣の改善は、高血圧のみならず、他の様々な生活習慣病の発症や進行を予防する効果も期待できるため、積極的に行うようにしましょう。

薬物療法

高血圧の治療に使用される主な薬は、降圧薬(または高血圧薬)になります。
降圧薬には様々な種類があるため、患者様の状態や持病の有無に合わせて、適切なものを選択します。
降圧薬は、主に以下の5つのタイプに分類されます。ただし、降圧薬の中には、特定の疾患を持つ患者様には推奨できないものや、用法・用量が細かく指定されるものがありますので、過去の病歴や医療履歴、現在の病状などを医師に伝え、最適な方法を提案してもらうことが重要です。

  • 血管を拡大して血流を促し、血圧を下げる薬
  • 心臓機能を抑制することで血液の流出量を制御し、血圧を下げる薬
  • 尿量を増加させて体内の総血液量を減少させ、血圧を下げる薬
  • 自律神経をコントロールして血管の緊張を緩和し、血圧を下げる薬
  • 血圧上昇の因子を制御し、血圧を下げる薬

高血圧を予防する
運動について

少し息が上がる程度の運動をする

適度な運動は高血圧予防に効果的です。適切な運動量は、心拍数が少し上昇し、息が少しときついと感じる程度の有酸素運動が最適です。1日30分以上の運動量を目安としましょう。
30分が難しい場合は10分程度でも良いので行い、運動習慣を身につけることが大切です。
また、運動は必ずしも連続して行う必要はありません。日中に運動可能な時間をうまく作り、1日合計して30分以上運動することを目標としましょう。
忙しい場合は、朝や帰宅後にウォーキングを行うなど、日常生活内に運動習慣を自然に組み込むと良いでしょう。

無理な運動はしない

運動療法において重要なのは、無理なく継続していくことです。頑張り過ぎてしまうと、途中で挫折したりけがのリスクも高まるため、継続できなくなる可能性があります。
まずは、急激にハードな運動をしようとは思わず、穏やかで簡単なものから始めてみるのが良いでしょう。
家事、車の清掃、子どもと遊ぶ時間、自転車での買い物なども運動量が多くなるため、このように日常生活の中に取り込むことができる活動を増やすことも有効です。
最新の研究では、1回30分の有酸素運動を週に2回ペースで行うだけでも、、血圧を低下させる効果があることが示されています。また、運動療法においては、運動量は1週間の総運動時間や消費カロリーを基準に設定します。よって、忙しくて毎日の運動が困難な場合は、1回の運動時間を長く設定すれば、週の運動回数が少なくても同様の効果が得られます。このように、運動療法は個人のライフスタイルに合わせて調整することが可能です。

準備運動をしっかりしましょう

運動療法を行う際は、準備運動をしっかりと行うようにしましょう。準備運動せずに突然運動を始めると、筋肉に過度な負担がかかってけがのリスクを増加させます。
まずは、軽い足踏みやストレッチングなど、少なくとも5分程度は体をゆるやかに動かして、血行を良くしましょう。これらを行うことで、体を自然に運動状態に切り替え、安全で効率的に運動することが可能となります。


栃木県民に高血圧が
多いのは塩分摂取量が多いため?

栃木県は全国でも塩分摂取量が多い地域というデータがあります。塩分は我々の身体にとって必須栄養素の一つですが、摂取過多になると体内に水分が蓄積しやすくなり、高血圧を引き起こす可能性が高まります。
栃木県民は全国的にみても高血圧患者が多く、また高血圧での死亡率が高いことが報告されています。原因は一概には言えませんが、伝統的に塩分の多い食習慣が受け継がれていることが原因の一つとして考えられています。本人は減塩しているつもりでも、客観的データでみると減塩できていない場合もありますので、少しでも高血圧に不安をお持ちの方は、当院にご相談ください。


塩分を減らすコツ

少しずつ減らす

味覚は徐々に慣れていきますから、毎日少しずつ食塩量を減塩していくことがコツです。

塩分量を知ろう

普段主に食べているものの塩分含有量を知って、調理法などを工夫しましょう。

酸味や香辛料で味を上手に整える

食塩を多く使わなくても、酢やレモンなどの酸味や、胡椒、わさび、唐辛子などの香辛料を使って上手に味付けすることで、薄味でもおいしく食べられます。

汁の量を減らす

汁物は塩分が豊富なため、具を多めにして汁の量を減らします。めん類の場合はつゆを飲み干さずに残すようにしましょう。

野菜を食べて塩分を排出

野菜に多く含まれているカリウムには塩分を体外に排出する働きがあるので、目安として1日350グラムは野菜を摂るようにしましょう。ただし、腎臓に疾患がある方は、カリウムの摂取制限が必要な場合がありますので、医師にご相談ください。